写真は今まで述べてきた内容を全て具現化したプリアンプです。フィガロと命名しました。このプリアンプは現在北九州の某オーディオマニアのお宅で活躍しております。

 このケースは6面全て10m/m厚のアルミニュームで作りました。理由は過去の経験でケースの剛性が音質を作り上げる結果となる事が解っていたからです。

 音質としては決して特徴のある音ではありません。いわゆる普通の音です。しかし、過去のプリアンプの普通の音とは次元が異なります。音楽そのものの確信に迫る普通の音です。

 私は過去何種類ものボリューム回路を試作して参りました。その中で最も優秀だったと思える音はナショナルセミコンダクターが発売している電子ボリュームのプリだったと思います。私の現用システムでも使っております。しかし、今回のNFボリュームはそれを遥かに越えた音だと確信致しました。それは普通の音なのです。言い替えれば自然な音なのです。

 電子回路とは現在ではほぼ開発し尽された感があります。しかし、私が何回も申し上げるように

 “何を使っているか? では無くどのように使っているか?” なのだと思います。要するに

 “当たり前の物を当たり前に使っていては未来は無い”

 なのだと思います。

 しかし、このフィガロにも欠点はあります。それは全て10m/m厚のケースです。当然特注品です。ほとんどの加工はフライス盤で行ないます。要するにケースが高いのです。これは仕方がありません。よって、価格は80万円です。そのほとんどがケースの加工代です。

 ご希望の方がおられましたらお作り致します。その時はメール又はお電話を頂ければ幸いです。
 電気は目に見えないから嫌いだと言う人が多くおります。しかし、電気の場合は測定器を使う事により目で見る事が出来ます。これは私の知る限りでは電気だけです。例えば機械の場合は動作そのものは目で見る事は可能です。しかし、各部品にどの程度の応力が掛かっているかは解りません。それを知るためには大変な測定が要求されます。建築の場合はそれすらも知る事が出来ません。化学に至っては化学反応は全く目に見えません。単に構造化するだけです。特に近年の高分子化学となるととてつもない数の分子が存在します。私にはとてもとても理解など出来ません。やはり電気は易しいと私は思っております。

 以下はこれまでの理論を具現化したプリアンプについてです。

 NFB回路に R3 と C1 を入れると低音域はコンデンサー C1 により通過しずらくなります。すると NFB の量が減って低音域はブーストされます。しかし、このままでは低音域は果てしなく上昇してしまいます。そこで R3 を入れて上限を設定します。この C1 の容量を変える事により低音上昇の周波数点を変える事が出来ます。

 次に R1 に並列に C2 を入れますと高音域のブーストが可能となります。これは高音域を C2 に流して高音域のNFBを減らす役目を果たします。勿論 C2 の容量を変える事により上昇の周波数点を変える事が可能です。しかし、このままですと高音域は果てしなく上昇してしまいます。そこで実際には C2 に直列に抵抗を入れる必要があります。その抵抗値により最大上昇率を設定可能となります。

 これらの値は全て計算により算出可能です。この事が電気は全て理論で解決できる証なのです。例えば私は元々は機械やです。勿論機械の世界も建築の世界も計算で算出可能です。しかし、それらは最後に安全率を加算します。例えばエレベーターなどの安全率は相当に大きな値を加算します。鋼材そのものにも元々安全率が加算されております。それを使う場合には構造体にするために更に安全率を加算します。それが機械や建築の世界です。しかし、電気の場合は例えば C1 はその値でなければならないのです。そこに電気の面白さがあると私は思っております。
 では R2 を R1 よりも下げたら? 当然マイナスの増幅率になります。では短絡してしまったら? 当然増幅率は 0 です。これは出力も当然 0 である事を意味します。この事は何を意味するか? です。

 オーディオ回路の音圧調整は通常ボリュームによる分圧で行います。しかし、ここに問題があり音質の変化に繋がります。その他にも最も顕著なのは周波数特性を持ってしまう事です。そこで数十年も前からボリュームによる音質が取りざたされているのです。しかし、上述の回路では R2 を例えボリュームに入れ替えても問題である分圧はしていません。単なる抵抗として働きます。すると当然周波数特性は持たない事になります。音質に関しても単に抵抗として働きますので出力される音声信号は流れておりません。当然音質に与える影響は極少である事は明らかです。

 しかしながらこの回路は逆相になってしまうのです。ここで提案です。多くのプリアンプは入力のボリュームで絞った後にフラットアンプで増幅しているのです。無駄です。そこで逆相の増幅率調整回路を入れてやれば位相は元に戻ります。更にこの時に増幅率調整回路を入れた後に上述のボリューム回路を入れるのです。当然SN比は抜群となります。この回路をプリアンプに使わない手はありません。

 以下はこれらの NFB 回路にコンデンサーを入れたらどうなるか? についてです。

 右は逆相増幅回路を意味しています。要するに入力端子である -端子 にプラス電位が入れば出力端子にはマイナス電位が出力される事になります。その電位は R1 と R2 の値で決まります。

 右の逆相回路の増幅率は

    R2/R1

 となります。例えば R1 が 1 であって R2 が 2 の場合は増幅率は 2 となります。要するに 6dB となります。

 さて、では R1 と R2 を同じ値にしたらどうなるか? 当然増幅率は 1 です。0dB となります。
 さてこの図の場合正相増幅回路を意味しております。正相増幅回路の場合は入力がプラスであれば一定増幅率を持ってプラスの出力をします。では一定増幅率とは? 図の場合の増幅率は (R1+R2)/R1 で表されます。では R2 を短絡してしまったら? 当然増幅率は 1 です。入力 1 に対して出力も 1 です。これがいわゆるバッファーと呼ばれる回路です。ではどんな意味があるのか? 仮に入力信号のインピーダンスが高かったとします。すると回路の引き回しにより外乱ノイズを呼ぶ事になります。しかし、出力インピーダンスの低いバッファーを通しますと回路のインピーダンスが下げられ外乱ノイズの防止になるのです。これは真空管時代にカソードフォロアーで出力させていたのと同じ考え方です。

 図の場合 R2 を短絡させてしまっても出力は 1 以下にはなりません。では入力に対してマイナスの信号を出力させたい場合は? 通常はボリュームで絞ります。しかし、ボリュームで絞るとオーディオ回路の場合はボリュームの影響を受け音質の劣化、或いは音質の変化につながります。では音質に影響を与えないでマイナスの信号を出力させたい場合は? その場合は逆相回路を使えば実現できます。

 ここでワンポイントアドバイスです。多くの人場合マイナス増幅に関する観念が希薄だと思います。しかし、例えばCDプレーヤーを考えてみて下さい。多くのCDプレーヤーの平均最大出力電圧は約2ボルトです。この電圧をそのままパワーアンプに入れますと多くのパワーアンプは最大出力に達します。では一般のプリアンプはどのようにしているのか? ボリュームで信号を絞って更にフラットアンプで増幅しているのです。非常に不合理な事を行っているのがご理解頂けたと思います。

 では不合理な事をやらない方法とは? 以下にご説明いたします。

 右の三角は増幅回路を意味します。信号は A点 に入ります。Ro は+入力端子のイマジナリーアースとして働きます。当然前段の負荷としても機能しております。

 ここでイマジナリーアースについて説明しましょう。抵抗は電圧が掛かれば当然電流が流れます。しかし、電圧が掛かりませんと電流は流れません。すると G点 と A点 の電圧は同じである事になります。G点 は当然アースです。すると入力が無い場合は A点 もアース電位である事になります。これをイマジナリーアースと表現します。このイマジナリーアースは増幅回路自体の電位の固定の役割も果たしております。解り易く言いますと例えば犬の鎖のようなものです。犬の鎖は犬が勝手に歩き回らせない役目です。Ro も増幅回路自体が電位的に何処に位置させるかの働きをします。右図の場合は増幅回路自体の基本電位はアース電位である事になります。

 NFBとは勿論ネガティブフィードバックの事です。世の中にはポジティブフィードバック回路もあります。この代表的回路は発振器です。要するにポジティブフィードバックの場合は入力を肯定する訳ですから発振状態になる訳です。

 ネガティブの場合は入力を否定する回路です。否定する訳ですから増幅率は当然下がります。しかし、単に増幅率が下がる訳では無く歪みを軽減してくれる大変な恩恵がある回路です。一部の真空管式アンプの愛好家にはNFBを否定する人もおりますがそれは真空管自体の性能が充分に備わっている場合は問題はありません。しかし、そのような真空管は極一部の物であって多くの物はやはりNFBのご厄介になった方が無難です。

 NFBを説明するにはリニアーICを利用するのが理解しやすいと思います。リニアーICとはオペアンプとも呼ばれ現在の弱電機器では多用されております。リニアーICとはその名の通りリニアー動作を致します。リニアー動作とは線形動作とも言い入力信号に対して一定の増幅率を伴って比例動作をします。では各種イコライザーの場合は? イコライザーの場合は周波数により増幅率を変化させる回路ですのでリニアー動作をしています。勿論グラフィックイコライザーもリニアー動作です。リニアー動作をしていない回路は音楽をCD化する場合にCDのフォーマットに納めるために大きな信号に対しては圧縮して振幅を押さえてしまう回路があります。この回路がいわゆるコンプレッサーと呼ばれる回路です。コンプレッサーを利用しませんとCDに収まらない音楽が非常に多いのでコンプレッサーは必要悪と言えると思います。しかし、ノンリニアー回路でコンプレッサーで圧縮された音楽を元に戻してやると生々しい音になります。

 この辺の技術についてもいずれご説明したいと思います。

 以下はNFBをブロックダイアグラムを利用してご説明する予定です。
 では何故 R2 及び R3 が必要なのか? です。R2がありませんと低音域に対しては直流に対して果てしなく増幅率が上がってしまいます。それを押さえるたみにR2を入れる必要があるのです。

 次に高音域に関するC2及びR3に関してです。コンデンサーは周波数が高くなれば抵抗値は下がります。当然増幅率も下がります。この特性を利用したのがRIAA回路です。

 では何故R2及びR3が必要なのか? R2に関しては上述しました。ではR3は?  回路によっては不必要です。実際に過去にはR3の無いイコライザー回路の物が存在しました。理由はR1があるからです。抵抗の場合はインピーダンスがありません。直流に関しても交流に関しても抵抗値が変化する事はありません。要するにイコライザー回路の基本的な増幅率はR1の値で決まってしまうと云う事です。この論理はとりもなおさずNFBの論理そのものです。

 以下はNFBの理論に関してにしましょう。

 右は基本的なRIAA回路です。

 C1はC2に比べ大きく設定します。理由はC2に比べより低い周波数を通過させる必要があるからです。要するに低い周波数はC1を通過してNFBが低く動作します。当然増幅率は高くなります。それに対して高音域はC2を通過します。しかし、そこには当然コンプライアンスが存在します。コンプライアンスとは周波数により抵抗値が異なる事を意味します。

 低音域はC1を通過して大きな増幅率を確保致します。要するに低音域のふくよかさを演出します。しかし、このままにしておきますと低音域は果てしなく増幅率が上昇してしまいます。そこでR2を並列に入れておきます。R2の働きは低音域の果てしない増幅を抑える働きをします。

 高音域はC2を通過します。その時に低音域と同様抵抗が接続されております。当然周波数により抵抗値に変化を生じます。その変化を通常見通常のRIAA特性に合わせるのです。それがR1でありR2である訳です。時定数は一段ですので特性としては6dB/octとなります。

 RIAA回路はCDが主流になった現在に於いてはあまり意味の無い事かも知れません。しかし、コンデンサーの動作を理解するには大変な意味を持っていると思います。

 RIAA回路は皆様もご存知のようにコンデンサーと抵抗との時定数で特性が決定されます。その特性はレコード発足時には色々な特性がありました。当時のプリアンプはその色々な特性が選択できる物もありました。この選択性は面白いもので一種トーンコントロールのような働きもしますので楽しいものでした。

 RIAA特性に限らず全ての回路は低音域の増幅率は大きく高音域に関しては増幅率が小さくなるものでした。その目的はレコードの溝にあります。要するに低音域は溝の振幅が大きくなりますのでレコードに刻み切れません。更にカートリッジがそこまでのコンプライアンスがありません。そこで低音域の振幅を小さくする必要があります。その特性を電気的に元に戻すのがイコライザー回路です。では完璧に元に戻せるのでしょうか? 答えは非常に正確に元に戻せます。しかし、それは電気的な正確さであって音楽そのものを元に戻せる訳ではありません。原因はレコード化する時のモニタースピーカーシステムの特性とエンジニアーの感性に関係してきます。更にレコードのダイナミックレンジにも大きく関係しています。この問題はレコードだけでは無くCDでも同じ事が言えます。

 要するにソフトに関してはその音質は非常に幅広く散在する事になります。原因の多くは皆様も良くご存知だと思います。そこで次回は論理的に解決できる内容であるRIAA回路の動作の概略をご説明致します。
 では何故マランツもマッキントッシュもわざわざカソードフォロアーで出力させているのでしょうか? 私の思うにテープデッキでのコピーを考慮しての事だと思います。要するにテープデッキを繋ぐと自らのフラットアンプとテープデッキの入力インピーダンスが2個ぶら下がる事になります。その時に出力インピーダンスの高いプレートフォロアーで出力させるとインピーダンスのミスマッチの危険が考えられるのです。この考え方は “転ばぬ先の杖” で正しい選択だと思います。しかし、その辺の技術的な事は無視して安易に3段増幅と見えたからそのように記事にしてしまったのだと思います。それが疑われる事無く現在にまで脈々と言い継がれて来たのだと思います。これは “噂の一人歩き” と似ていますね。例えば “メジャグランは良い品物を作っているみたい⇒メジャグランは良い品物を作っているそうだ⇒メジャグランの品物は優秀だ⇒メジャグランはやはりそこらのガレージメーカーとは違う” のようなものです。(実はこの仮の噂話は真実なのでありますがね!)

 “他人(人)を観たら疑うな。学問を観たら疑え” 私の恩師の言葉です。学問を疑うためにはそれなりの技術と知識が必要です。 “学問は教えられるものでは無く自ら追い求めるものだ” これは私が自分自身に言い聞かせている言葉です。教わった事柄は時間を経れば忘れてしまいます。しかし、自ら追い求めた知識は決して忘れません。やはり自ら追い求める執着心が必要なのだと思います。

 以下はRIAA回路が何故RIAA特性を示すのか? についてです。

 右はマッキントッシュ22型のフォノ回路のブロックダイアグラムです。確かに3段の増幅回路のように見えます。しかし、RIAA素子の入っている箇所を見て下さい。2段目のプレートから初段のカソードに戻っております。これはとりも直さず2段増幅回路です。では3段目は? 単にカソードフォロアーで出力させているだけです。よって、マッキントッシュ22型は2段増幅のフォノ回路であると言えるのです。
 Aの回路は一見3段増幅に見えますが3段目の Q3 がカソードフォロアーですので3段増幅とはなりません。もう少し詳しく説明しましょう。Q1 はプレートフォロアーですので増幅作用があります。その出力の位相は当然入力信号に対して逆位相です。Q2 の場合も Q1 と条件は同じです。当然 Q2 の出力位相は Q1 に対して逆位相です。ここで初段の入力信号と同じ位相に戻ります。Q3 の場合はカソードフォロアーですので位相は変りません。すると Q2 の出力が Q1 にフィードバックされたのと条件は同じになります。よって、マランツ7型は2段増幅のカソードフォロアー出力のフォノ回路であると言えるのです。

 以下はマッキントッシュ22型について考えてみましょう。

 右に示したAの回路はマランツ7型のブロックダイアグラムです。音声信号は Q1 と Q2 で増幅されます。その増幅された音声信号は Q3 に入ります。 Q3 はカソードフォロアーですので増幅作用はありません。むしろ0.9程度のマイナスとなります。

 Q3 からの出力は RIAA素子 を通り初段の Q1 のカソードにフィードバックさせます。これがマランツ7型の基本的な回路です。


 かつてのマランツ7もマッキントッシュ22も一見3段増幅に見えます。では本当に3段増幅であったのか? もし、本当に3段増幅であったとすると使われていた真空管は12AX7ですので裸の増幅率は100×100×100で百万倍に達します。百万倍に達した増幅率をRIAA回路でNFBを掛けるとほとんどの場合発振します。だからマランツもマッキントッシュも優秀なのだと云う意見もございましょうが実際は違います。

 皆様はマランツもマッキントッシュも当時の回路をお持ちだと思いますのでもう一度詳しくご覧になって下さい。マランツの場合はRIAA回路の三段目はカソードフォロアーになっています。マッキントッシュの場合は2段目のプレートからRIAAの素子を通して初段のカソードに戻しております。実際には両者共に2段増幅なのです。

 では実際はどのような動作をするのか?

 以下はブロックダイアグラムで2段増幅である事を証明しましょう。

 実際には左右のスピーカーの±の接続を合わせれば全く問題は起こりません。要するに極性とは左右の位相を合わせる目的しか無いと言っても過言ではありません。

 ではここで面白い事を申し上げましょう。実は著名メーカーのプリアンプに逆相アンプが実在したのです。それは真空管式時代のクォードです。クォード22型の初段のイコライザー回路は6267一本による回路です。ディバイスが一段の増幅回路は必ず逆相回路となります。ではフラットアンプは? 12AX7による二段増幅回路です。二段増幅ですので当然 逆相⇒正相 となりフラットアンプ自体は正相アンプです。するとレコードを聴いている時は逆相、ラジオを聴いている時は正相となるのです。後にも先にもオーディオ雑誌にこのような内容が載った事は無いと思います。おそらくこのような事を申し上げたのは私一人だと思います。要するに位相とはステレオの場合は左右さえ合っていれば問題は無いと云う事を知っておいて欲しいと思います。

 では三段増幅のマランツやマッキントッシュの場合は?

 以下に続きます。

 前回の説明で位相についてある程度ご理解頂けましたでしょうか。しかし、実際には電圧位相・電流位相が複雑に絡み合って来ます。オーディオの場合は最終的な負荷は電力を扱うスピーカーです。スピーカーそのものもコイルを動かしますので位相の回転を伴います。複雑怪奇で解析などとてもとてもできる内容のものでは無いと思います。

 さて、ここでオーディオの基本回路である増幅回路について考えてみましょう。オーディオ用の増幅回路は基本的には正相回路です。この回路は “やさしい電気教室” で若干触れておりますのでご一読頂ければ幸いです。とは申せこのページでもいずれもう一度触れたいと考えております。

 さて、オーディオ回路の場合は位相差 “0” の正相回路と位相が “180°” の逆相回路が存在します。では位相が逆の回路の場合の具体的な結果について少々述べましょう。スピーカー(ウーハー)に乾電池を繋いでみて下さい。その時にコーン紙が前にせり出して来る極性が正相です。逆相の場合は当然逆になります。しかし、昔のJBLのユニットの場合は一般とは逆になっておりますのでこの限りではありません。では何故このような事になっているのか?

 以下は正相の音の出方と逆相の音の出方についてです。
 上述はあくまでも物理的な内容で示しておりますが電子の世界でも当然発生致します。表現の方法としては共振として表現されます。要するに共振を伴う内容のものであれば全てサインカーブとなる事を意味しております。例えばアナログ式のRC発信器であればその発振カーブは全てサインカーブです。そのサインカーブを比較回路(コンパレーター)に入力すると矩形波になります。その矩形波を積分回路に入れると三角波になります。そんな理由でRC発信器の多くが上記の三種類の波を出力させているのです。要は簡単な回路で三種類の波形を出力可能な訳です。オーディオの世界であればスピーカーシステムのバスレフ式のエンクロージャーを考えてみて下さい。バスレフ式はウーハーの共振を利用したシステムです。するとバスレフ共振が発生すると全てサインカーブとなっている事を意味します。しかし、音楽の場合は次の音声信号がスピーカーに加わりますので共振は一瞬で終わる事になります。しかし、サインカーブが発生している事は確かな事です。ですからバスレフ式の場合は楽器本来の音質を無視した音質になってしまう訳です。

 さて、オーディオの世界では位相について多々発言されます。特にマルチシステムの場合は位相を取り上げて諸悪の根源的な言われ方も致します。しかし、コイルとコンデンサーを利用したネットワークでも実際は条件は変りません。それどころかネットワークシステムはスピーカーシステムとして固定されている物がほとんど全てです。すると位相の変移が生じても対処の方法がありません。要するにネットワークシステムの場合は位相を論じても対処不能ですのであえて触れていないだけの話であって至って勝手な論理の展開(?)を行っている事になります。ネットワーク派の中には “位相に関してはメーカーが設計段階で対処している” と言う人がおりますがそのような事は事実上不可能です。コイルとコンデンサーが入っている限り位相の変移は逃れられません。

 その点マルチシステムの場合は各ユニットは別個々々に設置されます。すると各ユニットの位置を動かす事によりベストとは申しませんがベターな状態に調整可能と云う事になるのです。よって、マルチチャンネルシステムは非常に優れたシステムを作り上げる事が可能な優秀なシステムであると言えるのだと思います。

 さて、ここで少々考えてみましょう。位相差 90°の電子回路は可能か? です。回路によっては可能です。しかし、大変な内容が伴いますのでオーディオ回路ではそのような回路は使いません。しかし 180°の位相差の回路は簡単に出来ます。

 以下は位相差 180°の回路についてです。
 右はサインカーブとコサインカーブの軌跡です。当然 0°から始まりす。

 サインカーブは 0°の時は当然 0 です。コサインカーブは 1 となります。その角度の差は 90°となります。これが位相差です。

 位相とは時々刻々変移を生じる伴う内容の事を代表した表現とお考え下さい。例えば商用電源の場合は関東以北であれば右に示した円の一周を 1/50秒 で司る事になります。

 例えばこの軌跡は時計の振り子であれば円周上の移動はありませんが図に示すとサインカーブとなります。要するに外部からのエネルギーが供給されない限り自然界に多く存在する軌跡であると言えます。

 正相の相とは当然位相の相を意味します。ここで妙なお話をしましょうね。デジタル屋さんはビットと云う言葉が大好きです。説明のしずらい内容には多くの場合ビットと云う言葉を使うようです。例えば現在のCDは16ビットで働いております。これはマルチビットて云う言葉で代表されます。ではワンビットマシンの場合は? ビットが一つしか無いのか? の疑問が生じます。ビットが一つだったら何も表現出来ませんよね。この問題はいずれ説明するとしてアナログ屋さんの場合は位相と云う言葉が大好きです。

 実はここが問題なのです。電気は電力・電圧・電流から成り立っております。しかし、この各々に位相が存在するのです。多くのテキストの場合はいちいち電圧位相であるとか電流位相であるとかの説明はしません。それは読む側が理解していると云う前提の下に書き下しているからです。しかし、オーディオマニアの多くはそこまで理解していないと思います。この説明はサインカーブとコサインカーブを例に挙げて説明すると比較的簡単です。

 以下はサインカーブの位相とコサインカーブの位相についてです。
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 電子と聞くと多くの人がのけぞってしまうと思います。しかし、電子の世界はほとんど全て論理で解決できる世界なのです。そこでこのページでは具体的な電子の世界をご紹介する事に致しましょう。とは申せ当サイトはオーディオサイトですのでオーディオ関係以外のお話はありません。全て音声信号に関わる内容とする予定です。

 電子の世界は電圧と電力の世界に二分して考えませんと理解出来ません。オーディオの世界では電圧はパワーアンプの前に位置する機器がそれに相当します。パワーアンプは単に “電圧・電力変換機” です。

 要するにパワーアンプとは音声信号として受け取った電圧を電力に変換するための機器であると云う事です。これを平たく説明致しますと電圧回路の場合は最終出力信号に負荷されるインピーダンス(抵抗値)が数kΩ以上である事が大前提となります。それに対して電力回路(パワーアンプ)の場合は数Ωから数十Ωが大前提となります。これが電圧回路と電力回路の最大の違いとなります。

 この事はオームの法則である V=I・R と W=V・I をご理解頂ければ一目瞭然だと思います。但し皆様が計算する場合に次元(単位)合わせをしませんととんでもなく間違った結果になります。

 次元(単位)合わせとは例えば我々がクルマに乗っていたとします。その時の時速が40kmだったとします。この時の40kmとは正確には40km/hです。要するに “一時間あたり何km進んだか?” が正確な言い方です。これが例えば40m/hと表示されたら結果は1000倍の差として表示されてしまいます。これが次元です。

 次元とは標準 “1” を基準にマイナス方向とプラス方向に二分されます。例えば40km/hの “k” は基準に対して1000倍を意味します。

 自然科学の世界である電子の世界も次元を合わせませんと答えは間違った答えになってしまいます。

 このページでは比較的簡単に増幅作用が理解し易いプリアンプを主体に電子回路の説明をしたいと思います。しかし、デバイス(真空管・トランジスター・FET)の動作そのものを説明しようとしますと膨大な内容となってしまいます。そこで増幅回路自体に関しては説明しません。それに関しては “やさしい電気教室” をご覧下さい。

 このページでは “増幅回路をいかに活用するか?” 関してのページと致します。

 以下は位相についてです。

   FIGARO